- 2024.03.12
家を売るベストタイミングとは?6つの判断基準・売ってはいけない時期を解説
家を高く売るには売却のタイミングが重要です。ベストタイミングで売却できれば、希望を上回る額になる可能性が高まります。
しかし、どのタイミングが良いのかわからず困っている人も多いはず。そんな人に向けて、売るタイミングの判断基準や売ってはいけないタイミング、早く・高く売るコツを紹介します。
目次
家を売るタイミングを決める6つのポイント
家を売るベストタイミングは、家の状況や状態などによって異なります。売却価格を左右する要素を知っておけば、好条件で売りに出せる可能性が高まります。売却価格を左右する主な要素は次の6つです。
- 1. 相場
- 2. 築年数
- 3. 税金
- 4. 住宅ローン金利
- 5. 季節
- 6. ライフスタイルの変化
家に加えて、自身の状態・状況も加味すれば、家を売るベストタイミングが見えてくるでしょう。次の章から、各要素を解説していきます。
1. 相場から見る家の売却タイミング
不動産の相場は年々変動しているため、家の売却時は動きの見極めが重要です。現在の価格指数をもとに、家の売却に最適なタイミングを探っていきましょう。
不動産の相場は右肩上がり
一戸建てやマンションといった不動産の相場は、国土交通省が発表している「不動産価格指数」が参考になります。以下は2023年9月分のグラフです。
※出典元:国土交通省│不動産価格指数(令和5年9月・令和5年第3四半期分)
赤色の「住宅総合」は2013年頃から緩やかに上昇、2021年から急激に上がり始めています。青色の「戸建住宅」は2020年頃まで横ばい傾向でしたが2021年から上昇、以降は高水準をキープしています。緑色の「マンション」は、2013年以降右肩上がりが続いている状況です。
市場価格が上昇しているこの状況は「不動産バブル」と呼ばれるほど。不動産の相場が上がっている理由は、地価の上昇、住宅ローン金利の低下、新築マンションの供給減少、投資物件としての需要増加などが挙げられます。
一戸建てもマンションも需要に対して供給が追いついていない状態なので、今は売却に良いタイミングと言えるでしょう。
【結論】相場が上昇傾向のときに売却するのが吉
家を売るタイミングは、相場の高いときが理想的です。相場が今後も右肩上がりで上昇するのであれば、もう少し待ってから売った方がお得と言えます。一方、相場が右肩下がりになるようであれば、早く売った方が良いでしょう。
しかし、これらは相場の変動の仕方で判断が変わります。相場の変わり目はプロでも見極めが難しいと言われているため、不動産価格指数はあくまで参考程度に留めておくのが無難かもしれません。
最新の売却相場は不動産会社に確認を
不動産の売却相場は自分で調べることもできますが、公示地価や路線価図などを確認する必要があります。また相場は変動するため、リアルな売却価格に近い数字を把握するのはなかなか難しいでしょう。
いくらで売れるのか、家の売却価格の目安を知りたいときは、不動産会社に相談するのがおすすめです。無料の査定を受けることで、今のリアルな売却価格を把握できます。「査定=売却契約」にはならないので、まずは気軽に受けてみてはいかがでしょうか。
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2. 築年数から見る家の売却タイミング
家は築年数が古くなるほど価値が下がります。どのくらい下がるのか、築年数から見る売却のベストタイミングを見ていきましょう。
不動産の価値は築年数とともに低下する
以下は、国土交通省が発表した中古戸建住宅の価格査定の例です。
一戸建てもマンションも、築年数が古くなるほど査定価格が下がっています。下げ幅は一戸建ての方が顕著で、築15年あたりまで急激に下がっていく様子が見て取れます。築15年を超えると低下割合は緩やかになりますが、査定価格が上がることは考えにくいでしょう。
【結論】家の売却は築年数が浅いタイミングが理想
国土交通省のグラフを見てもわかるように、家を売るなら早いに越したことはありません。築15年までの間は、査定価格が急激に落ちていくため、売却を迷っているうちに価格が下がってしまう可能性があります。
築20年を超えると査定価格の下落は緩やかになり、ほぼ横ばい状態になります。そのため築年数の観点から言えば、売りを急ぐ必要はないでしょう。
とはいえ、立地によっては築年数が古くても高値がつくこともあります。売却したい気持ちがあるときは不動産会社に相談してみるのがおすすめです。
3. 税金から見る家の売却タイミング
税金から見る売却タイミングは、家の所有年数や、持ち家か相続した不動産かによって判断が変わります。さまざまな観点からの考え方を紹介します。
【結論】譲渡所得税を考えると所有期間が5年を超えてから
家を売却した際に利益が出ると、住民税+所得税から成る「譲渡所得税」が課税されます。税率は家の所有期間によって変わり、5年以上だと「長期譲渡所得」、5年以下だと「短期譲渡所得」に該当します。それぞれの税率は次の通りです。
区分 | 家の所有期間 | 住民税 | 所得税 |
---|---|---|---|
長期譲渡所得 | 5年を超える | 5% | 15% |
短期譲渡所得 | 5年以下 | 9% | 30% |
このように、税率は家の所有期間によって倍近くの違いがあります。急ぎの理由がなければ、所有期間が5年を超えてから売却した方がお得と言えます。
しかし、税金面では3,000万円の特別控除やマイホームの軽減税率があるので、総合的な判断が必要です。
3,000万円の特別控除:所有期間が5年以内でもお得に
家の売却時に利益が出ると譲渡所得税が課税されますが、3,000万円の特別控除を受けると税金の支払額を軽減できます。3,000万円の特別控除とは、課税対象となる譲渡所得を3,000万円分控除できる特例です。
例えば家を4,000万円で売却した場合、譲渡所得は4,000万円-3,000万円=1,000万円になります。家の売却価格が3,000万円以下であれば特別控除によって相殺されるため、譲渡所得はゼロ、つまり譲渡所得税の課税対象外になります。
居住中の家であれば、3,000万円の特別控除を受ける条件に所有期間は関係ありません。つまり、所有期間が5年以下であっても、譲渡所得税を気にせずに売却できる可能性があります。
なお、この特例を受ける際は以下の点に注意が必要です。
以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
売却予定の不動産が空き家の場合は、空き家になって3年が経過する年の12月31日までに売却する必要があります。
空き家の放置は倒壊のリスクや犯罪の助長など、さまざまなトラブルにつながります。全国的に問題になっている「空き家問題」について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
マイホームの軽減税率:所有期間が10年以上だとお得に
売却した年の1月1日時点で家の所有期間が10年以上だった場合は、マイホームの軽減税率が適用されます。特例が受けられれば、前述した3,000万円の特別控除適用後の譲渡所得が、以下のように低い税率で計算されます。
課税長期譲渡所得金額 | 住民税 | 所得税 | 合計 |
---|---|---|---|
6,000万円までの部分 | 4% | 10.21% | 14.21% |
6,000万円を超える部分 | 5% | 15.315% | 20.315% |
つまり、家を所有して9年以内で売却を検討している場合は、10年を超えてから売った方がお得になるというわけです。
相続財産を譲渡した場合の特例:3年10ヵ月以内に売却を
親や親戚などから相続した家を売る場合は、「相続税が取得費に加算される特例」を利用できる可能性があります。
これは、家の購入にかかった費用である取得費に相続税が加算される特例です。課税対象となる譲渡所得の金額が減るため、節税につながります。
なお、この特例を受ける条件の中には以下の記載があります。
その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。
相続税の申告期限は、被相続人の死を知った日の翌日から10ヵ月以内です。つまり「相続税が取得費に加算される特例」を受けるには、被相続人が亡くなってから3年10ヵ月以内に家を売却する必要があります。
相続した不動産を売却するときにかかる税金はいくら?特別控除や注意点をチェック
4. 住宅ローン金利から見る家の売却タイミング
家を売る際は、住宅ローン金利もチェックしましょう。金利の推移とともに、家の購入希望者の心理状況を読み取ることで、家の売り時が見えてきます。
住宅ローン金利の現状
2016年のマイナス金利政策の影響で、住宅ローンは低金利に移行しました。フラット35を例に挙げると、2010年4月時点で2.59~3.59%だった金利が、2020年4月時点では1.3%~2.03%まで下がっています。
【結論】売却のベストタイミングは住宅ローンが低金利のとき
多くの人は、家の購入時に住宅ローンを利用します。それを踏まえると、家の売却は住宅ローンの金利が低いときがベストタイミングと言えます。
その理由は、金利の低さは利息の少なさを表すからです。購入者目線で考えると、総返済額を抑えられることでローンを組みやすくなります。
ただし、注意点もあります。住宅ローン金利の低さは不景気を表しているため、購買意欲が高い時期とは言い難いのです。住宅ローン金利は、家の売り時を判断するひとつの指標にはなりますが、他の要素も加味した上で判断した方が良いでしょう。
5. 季節から見る家の売却タイミング
家の売却の成約件数は月によって差があり、転勤や進学を控える3月頃に増える傾向があります。
家の購入希望者が増える3月のタイミングを逃さないためには、以下のポイントを意識することが大切です。
- 1. 12月には不動産会社に売却を相談する
- 2. 1月には売りに出す
- 3. 2~3月で成約を目指す
しかし、グラフを見てもわかるように、3月以外の月も多くの家の売却が成約しています。そのため、月にこだわるのではなく「売りたい」と思ったときがベストタイミングと言えるでしょう。家の売却時期は季節以外の要素も含めて考えるのがおすすめです。
6.ライフスタイルから見る家の売却タイミング
ライフスタイルの変化も、家の売却のタイミングを考えるひとつの基準です。よくある売却理由としては以下のものが挙げられます。
<売却の主な理由>
- ・家を相続したが住まない
- ・住み替え
- ・ローンの返済が困難になった
- ・離婚
- ・転勤
- ・親との同居 など
自身や家族に変化があったときは、家を売る良いタイミングかもしれません。手前で紹介した築年数や所有期間なども加味しつつ、ベストタイミングを探っていきましょう。
離婚に伴い家を売却する際の注意点や、売却に適したタイミングは以下の記事で詳しく解説しています。
離婚で不動産売却するときの注意点とタイミングは?売却方法と流れを簡単に解説
家を売らない方が良いタイミング
家を売るベストタイミングがある一方で、売らない方が良いタイミングも存在します。以下の状況に当てはまるときは、売却を待ってみても良いかもしれません。
- ・不動産相場が上昇傾向にある
- ・税制面での優遇を受けられない
- ・住宅ローン金利が上昇した
それぞれ詳しく解説していきます。
相場価格が上昇傾向にあるとき
不動産相場の上昇は、家の供給より需要が高まっていることを表しています。まだ上昇が見込めるタイミングで売ってしまうと、相場が上がり切ったときに売るよりも利益が減ってしまうため、見極めが重要です。
例えば人口増加や再開発、大規模なイベントの開催などが理由で不動産相場は上がることがあります。家の周辺に当てはまるものがあり、今後も相場が上がりそうであれば、まだ家を売るベストタイミングではないでしょう。
しかし、相場価格を自分だけで判断するのは難しいものです。不動産会社に相談しつつ、売却のベストタイミングを探っていきましょう。
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税制面での優遇を受けられないとき
税金の章で解説した通り、家の売却時は税金が大きく関係してきます。3,000万円の特別控除は、居住中の家を売るのであれば売却時期は関係ありません。
しかし、マイホームの軽減税率は所有期間が10年以上だとお得になり、相続財産を譲渡した場合の特例は、被相続人が亡くなってから3年10ヵ月までに売却する必要があります。
「もう少し後に売ればマイホームの軽減税率を受けられた」「3年10ヵ月を過ぎてしまい、相続財産を譲渡した場合の特例を受けられなかった」とならないよう、売却時期には注意しましょう。
住宅ローン金利が上昇したとき
金利は住宅ローンの返済額を大きく左右します。金利が高くなると「購入意欲が低下→家の需要の低下→売却価格の低下」の悪循環につながる恐れがあります。
現在は低金利状態で、その面で言えば売り時です。しかし、低金利状態は今後も続くとは限りません。金利は国債の利回りや、市場の金利情勢などによって決まります。
今後、住宅ローン金利が上昇しそう・上昇傾向にある場合は、売り時とは言い難いでしょう。
家を高く・早く売る3つのコツ
家をなるべく高く、そしてスピーディーに売るためには、以下の3つのコツを意識して動きましょう。
- ・計画的に行動する
- ・複数の不動産会社に査定を依頼する
- ・買取方式を選ぶ
それぞれのコツを解説します。
1. 不動産売却は計画的に行動する
家を売りに出しても、すぐに購入希望者が見つかるとは限りません。売ると決めてから買主を見つけて売却を完了するまで、3~9ヵ月ほどかかります。
流れ | 目安となる期間 |
---|---|
不動産会社への相談・査定 →不動産会社と媒介契約の締結 |
1~4週間 |
売却活動 →購入者と売買契約 |
1~5ヵ月間 |
手付金の受領 →物件の引き渡し |
1~3ヵ月間 |
売却を急いでいる場合は、買い手が見つからないと売り出し価格を下げなくてはいけないケースも。満足のいく売却ができるように、遅くても売りたい時期の6ヵ月前から計画的に準備していきましょう。
不動産売却のスケジュールと期間|具体的な流れや短くするコツも解説
2. 複数の不動産会社に査定を依頼する
家の査定額は不動産会社によって差があります。できれば複数社に査定を依頼して、内容を比較しましょう。依頼することで、査定額だけでなく会社や担当者の対応、信頼度なども把握できます。
3. 「買取方式」を選ぶ
家の売却方法には「仲介方式」と「買取方式」の2種類があります。
種類 | 概要 | 買主 |
---|---|---|
仲介方式 | 売主と買主の間に不動産会社が入り、 売買を仲介する |
主に個人 |
買取方式 | 不動産会社が家を直接買い取る | 法人(不動産会社) |
買取方式は購入希望者が見つかるのを待つ必要がなく、現金化までがスピーディーです。家を早く売りたい、早く現金化したい場合は、買取方式を選ぶのも一案でしょう。
ただし、仲介方式よりも売却価格が安くなる傾向にあるので、まずは不動産会社への相談から始めてみてはいかがでしょうか。
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家の売却価格は相場や築年数、税金、住宅ローン金利などによって変動します。なるべく高く売るには、売り時を見極めることが重要です。
しかし、相場や金利の先行きは個人で判断するのは難しいもの。「今、不動産を売るべきか」「手放すベストタイミングはいつだろう」と悩んでいる人は、不動産会社に相談すると、きっと見通しが立つでしょう。家の売却は大きなイベントだからこそ、納得のいくタイミングで売りに出してくださいね。
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1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。