- 2024.04.26
住宅ローン返済中は離婚できないの?残債がある問題点や対処法を解説
離婚を考えている人のなかには住宅ローン返済中であるため、離婚できないのでは?と考える人もいるかもしれません。しかし実際は、住宅ローン返済中でも離婚は可能です。ただし、住宅ローンの残債がある場合はいくつかの問題点があります。
この記事では、住宅ローン返済中に離婚できないと思われる理由や、離婚時に住宅ローンが残っているときの対処法について詳しく解説します。
目次
「住宅ローン返済中は離婚できない」は間違い
住宅ローンが残っていても離婚はできます。離婚は双方の合意のもと行われるもので、金融機関は法律上離婚を阻止する権利を持っていません。
しかし、住宅ローンが残っている夫婦が離婚をするとさまざまな問題があります。この問題点については、次の章で詳しく紹介します。
住宅ローン返済中に離婚できないと思われる理由は問題点の多さにある
住宅ローン返済中に離婚できないと思われる理由は、法律や税金面において問題点が多いからです。ネックになりやすい問題点について解説します。
問題点①住宅ローンの名義変更をするのが難しい
住宅ローンの名義変更は難しく、ほとんどの場合は金融機関に却下されてしまいます。
住宅ローンは、基本的に契約した本人が最後まで返済するルールです。金融機関は契約名義人に対して審査を行い貸付を行っているため、契約途中で他の人に名義が変更されると返済のリスクが高まるからです。
そのため、離婚を理由に金融機関が住宅ローンの名義変更を認める可能性は低いといえます。
問題点②ペアローンの解消ができない
住宅ローンは、ペアローンの解消が難しいとされています。
ペアローンとは、夫婦が別々にローンを組んで1つの家を購入する方法。離婚をする場合、共同で家を購入しているので、離婚後に家を所有する方に債務を一本化したいと考える人がほとんどでしょう。その際は、ローンの借り換えや一括返済が必要になるのが一般的です。
しかし、離婚後、家を所有する方の返済能力が不足していると、新たなローンを組めない場合があります。その場合、離婚しても元配偶者と共同債務者として返済する義務が残るため、関係が継続することになります。
問題点③連帯保証人を変更するのが難しい
住宅ローンに連帯保証人がいる場合、新たな連帯保証人が見つからないことが多く、変更は難しいのが一般的です。
住宅ローンで多いのは、契約名義人が夫、連帯保証人が妻のケース。契約名義を変更できない場合は離婚後も関係が続き、夫の返済が滞ると妻がその責任を負うことになります。
問題点④住宅ローン返済トラブル
離婚後にローン返済のトラブルが発生することも少なくありません。例えば、住宅ローンの名義人が支払いをせずに、最悪の場合連絡を断つケースです。
ローン返済が滞ると、前述した通り連帯責任者が返済の責任を負うことになります。離婚時に住宅ローンの返済について話し合う場合は、口約束は避けた方が無難です。
問題点⑤家の所有権トラブル
家の所有権についても、トラブルになりがちな事項です。
例えば、住宅ローン契約や家の登記が夫名義であるが、離婚後は妻が住み続けたため妻がローンの支払いを行っていた場合に、ローンを完済したあとでも夫が所有者変更登記に同意しないケースがあります。
また、家の所有権を持つ元夫に勝手に家を売却されてしまうリスクも否めません。
問題点⑥税金トラブル
住宅ローンを返済中の離婚には、税金トラブルのリスクもあります。
法律上、離婚する際の財産分与には課税されません。しかし、ローン名義人が家を出たあとも長期間住宅ローンの返済を続け完済した場合は、元配偶者に家を贈与したとみなされることもあります。
贈与とみなされると、その金額に相当する税金を支払わなければならないため注意が必要です。
離婚時に住宅ローンが残っているときの対処法
離婚時に住宅ローンに残債があると、さまざまな問題が起こり得ます。トラブルに巻き込まれないために、あらかじめ名義変更や住宅ローンの借り換えを検討する、公正証書を作成するなど対処法を考えておきましょう。
家を売却してローンを完済するという方法もあります。
1.金融機関に名義変更について問い合わせる
ローンの名義変更は基本的に難しいのですが、金融機関によっては名義変更に対応してもらえる場合があります。まずは借入を行っている金融機関に問い合わせをしてみましょう。
ローンの名義変更をする場合は、現在契約している名義人と同等、もしくはそれ以上の返済能力が必要とされます。
2.住宅ローンの借り換え
離婚後も家に住み続ける方が住宅ローンの残額分で住宅ローンを組んで、借り直す住宅ローンの借り換えを行うことで、トラブルを回避できる可能性があります。
ただし、返済能力がないと借入できない点には注意が必要です。
また、借り換えには手数料がかかります。借入を行う金融機関に支払う印紙税や保証料、事務手数料の他、住宅ローンの残高がある金融機関への全額繰上返済手数料などが必要です。
その他の手数料も合わせて、30万〜100万円ほどかかると考えておきましょう。
3.離婚公正証書を作成する
離婚公正証書を作成しておくのも良い方法です。
離婚公正証書とは、夫婦で協議によって取り決めた財産分与や養育費などの離婚条件をもとに、公証役場で作成してもらう公文書のことです。
公正証書には金銭債権について執行力がありますので、支払いの公正証書を作成すれば、相手が支払うべき返済が滞ったときは裁判することなく財産の差し押さえの手続きが可能になります。
離婚公正証書の作成には、夫婦双方の同意が必要です。
4.家を売却する
離婚の際に住宅ローンの残債があるなら、家を売却する方法も1つの選択肢です。
売却額が住宅ローンの残高を超える場合には一括返済ができるので、将来的にトラブルに発展するリスクを避けられます。
もし住宅ローンの残高が売却額を上回る場合は、家を売却しても返済だけが残るので、名義人が返済するケースが一般的です。
残った債務は一括返済するのが原則です。支払い能力に不安がある場合には、任意売却という方法もあります。
任意売却とは、金融機関の同意のもと不動産の売買をすることです。売却額の決定権は金融機関が持ちます。
この場合、ローンの残高が売却額より高ければ継続してローンを支払わなければなりません。また、任意売却は信用情報に事故情報が載るデメリットもあるので、慎重に検討すべき手段です。
家を売却するメリットは3つ
離婚時に家を売却するメリットは、以下の3つです。
- 1.財産分与が公平にできる
- 2.離婚後の面倒なやり取りをしなくて良い
- 3.不動産の維持費がかからない
家は不動産であり物理的に分与ができません。そのため離婚時に家を売却して住宅ローンを返済すれば、公平な財産分与を行いやすくなるでしょう。
ローンや家の名義変更手続きなども不要になり、元配偶者との関係を続ける必要がなくなるのもメリットです。
また、家には固定資産税や修繕費など維持費もかかります。売却することでその金銭的な負担を減らすことが可能です。
家を売却して住み続けられる方法も
家を売却して離婚時の住宅ローンに関する問題をなくしたいという場合でも、売却後に住み続ける、リースバックという方法もあります。
リースバックとは、家を不動産会社などに売却したあと、売却先に家賃を払いながら住み続ける仕組みです。所有権は売却先が持ちます。
ただし、住宅ローンの残額が売却額を上回っている場合は利用が難しい点に注意しましょう。
住宅ローン返済中は離婚できないわけではないが問題点に注意しよう
住宅ローンの返済中であっても、離婚は可能です。しかし名義や所有権、税金などにおいて将来的にトラブルに発展する可能性はあります。
住宅ローンの返済中の離婚は、問題点についてあらかじめ夫婦でしっかり協議し、対処法を心得ておくことが大切です。
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1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。