住栄ジャーナル

JUEI JOURNAL

  • 2024.07.08

不動産売却を5年以内にすると税金が高い?所有期間が短い物件の売却のコツを紹介

不動産売却には譲渡所得税がかかり、取得から5年以内の売却は税率が5年以上の場合に比べて高くなります。ただし、税率が高くても売却価格が購入額を上回りメリットが大きい場合があります。さらに特例をうまく使って税金を抑える方法も。

この記事では、所有期間別の不動産売却における税率や5年以内に売却するメリットと使える控除・特例、不動産価格に影響する要因、所有期間5年以内の不動産を売却するコツについて詳しく解説します。

5年以内に不動産売却すると税金が高くなる

不動産は、取得から売却までの期間の長さで譲渡所得税が変わります。不動産所有期間を5年以内・5年超え・10年超えにわけて、譲渡所得税について紹介します。

所有期間で譲渡所得税の税率が大きく変わる

不動産を売買したときに発生する譲渡所得税は、所有期間によって変わります。

譲渡所得税の計算方法は以下の通りです。

譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)
譲渡所得税額=譲渡所得×税率

所有期間が5年以上かどうかで税率は異なります。

5年以上の長期保有(長期譲渡所得) 20.315%
5年以下の短期保有(短期譲渡所得) 39.63%

なお、所有期間が10年を超えると使える特例があります。

5年以内・5年超え・10年超えの税率の違い

実際に、不動産売却を行う場合のシミュレーション計算を見ていきましょう。

ここでは、5,000万円で購入した不動産を6,000万円で売却した場合を例としています。

譲渡価格(売却額):6,000万円
譲渡時にかかった諸経費:300万円
購入価格:5,000万円
取得時にかかった諸経費:200万円

【5年以下の場合】
6,000万円-(300万円+5,000万円+200万円)
=課税譲渡所得 500万円×39.63%
=198.15万円

【5年超えの場合】
6,000万円-(300万円+5,000万円+200万円)
=課税譲渡所得 500万円 × 20.315%
=115.75万円

【10年超えの場合】
所有期間10年超えの不動産に対する軽減税率の特例を適用すると、6,000万円以下までの金額に対する税率が年14.21%になります。

6,000万円を超えた金額については、20.315%の税率がかかります。

6,000万円-(300万円+5,000万円+200万円)
=課税譲渡所得 500万円×14.21%
=71.05万円

5年以内に不動産を売却するメリット

不動産取得から5年以内の売却は税率が高くなりますが、短期譲渡だからこそ得られるメリットもあります。5年以内に不動産を売却する2つのメリットを確認しましょう。

築年数が浅く価値が高い

戸建てやマンションなど形態に関わらず、築年数は浅い方が売却価格は高くなる傾向にあります。所有期間が伸びるほど、不動産の査定価格が低下する可能性があるので、早く売却した方が良い場合もあります。

地価や情勢の流れによっては購入金額を上回る

築5年未満のマンションは価値が大幅に下がりにくいとされていますが、不動産価格は物件の価値以外にも物件が存在する地域の特殊性や地価の動向等の経済情勢に大きく左右されます。

地価や情勢の流れによっては購入金額を上回る可能性もあるため、価格が上昇しているなら早めの売却の方が良いでしょう。

この場合は5年以内の短期譲渡で税率が高くても、売却のメリットの方が大きいといえます。

不動産の売却価格が変動する要因4つ

不動産の売却価格を左右する要因には、大きく、築年数、時勢や市況、立地やエリア需要、住宅ローン金利があります。

1.築年数

中古マンションや戸建ては早く売却した方が、売却額が高い傾向です。基本的に価格は新築時がピークで、経過年数が長いほど査定額も低下します。

なお、マンションと比較すると戸建ての方が資産価値の低下が顕著であるとされています。

2.時勢や市況

時勢や市況によっても、不動産価格は変化します。金融緩和やオリンピック・万博の開催などにより、不動産の価値が上がる可能性があります。

実際に東京オリンピックが開催された前後の時期には、経済効果によって不動産価格が高騰しました。2025年に大阪万博の開催が予定されているため、関西圏を中心とする不動産は今後価格上昇が見込まれます。

3.立地やエリア需要

立地条件やエリア需要も、不動産の価格に関わる要因です。

大規模な開発があった場合、その周辺に住みたい人が増加し不動産の需要が増えます。すると、その地域の地価は上昇傾向に。逆に、地域にあった大企業や大学などが撤退した場合は、需要が減り地価も下がってしまいます。

4.住宅ローン金利

住宅ローンの金利が低いときは、返済負担が軽減するため不動産を購入する人が増えます。低金利の時期であれば、所有する不動産を好条件で売却できる可能性が高まるでしょう。

反対に高金利の場合は住宅ローンの返済額が増えるので、不動産を購入する人が少なくなる傾向にあります。すると、売却価格も下がってしまいがちです。

5年以内に売却するときに使える特例2つ

所有期間5年以内に不動産を売却する場合、利用できる特別控除があります。2つの特例について見ていきましょう。

1.居住用財産の3,000万円の特別控除

居住用の戸建てやマンションを売却する場合、譲渡所得から3,000万円を控除できる特例があります。

この特例には所有期間や居住期間の制限がありません。譲渡所得が3,000万円以下であれば、税金は納めなくて良いという特例です。

例えば、5,000万円で取得したマンションを3年後に6,000万円で売却した場合、差額は1,000万円です。譲渡所得が3,000万円以内であるため、譲渡所得税は発生しません。

2.住宅借入金等特別控除

住み替え時に住宅ローンを利用する場合は、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)が使えます。

これは、新しく購入する住宅のローンにおいて、年末時点のローン残高0.7%を10年もしくは13年間、所得税や住民税から控除できるというものです。

控除しきれなかった場合は、翌年の住民税から一部控除できます。

3,000万円の特別控除とは併用できませんが、譲渡損失が発生したときの税金還付の特例の場合は、住宅ローン控除と併用可能です。

5年以内の不動産を売却するコツ

取得から5年以内に不動産を売却したい場合、売却活動や不動産会社の選び方にコツがあります。コツを押さえてスムーズにできるだけ良い条件で不動産を売却しましょう。

売却活動は早めに始める

前述したように、築年数から時間が経過すればするほど売却価格は低下する傾向にあります。売却を決めたら早めに売却活動を開始することをおすすめします。

売却理由を伝える

新築や築浅で不動産を売却する場合、買主から見るとなぜ売却するのかは気になる点です。そのため、売却したい理由を明確にすると良いでしょう。

転勤や離婚が原因で売却する場合であれば物件自体に原因がないので、買主は安心して購入できるはずです。

実績のある不動産会社を選ぶ

不動産を売却するときは、そのエリアやマンション・戸建ての売却に強い不動産会社を選びましょう。

複数の不動産会社に査定依頼するのがおすすめです。その場合、査定額だけでなく販売実績や対応の良さも比較して検討しましょう。

5年以内の不動産売却は税金と売却額を確認して検討しよう

所有期間が5年以内の不動産は、売却にかかる譲渡所得税が高くなります。ただし不動産の価値は築年数やそのときの社会情勢などに大きく左右されます。不動産売却の時期は、税金と市場価値を確認した上で検討しましょう。

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監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一 弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。