住栄ジャーナル

JUEI JOURNAL

  • 2024.06.17

不動産売却したら住民税はかかる?支払い方法や控除についても詳しく解説

不動産売買をしたときに、譲渡による利益が発生したときには所得税のほかに住民税がかかります。

実際に不動産売却をして住民税が発生した場合、「支払い方法はどうすればいいの?」「住民税を軽減する方法はあるの?」と疑問を持つ人もいるかもしれません。

この記事では、不動産売却したときに発生する住民税の支払い方法や、住民税を軽減する控除や制度も併せて解説します。

不動産売却したら住民税がかかる場合がある

不動産売却をすると住民税がかかる場合があります。

具体的にどんな場合に住民税がかかるのか、また不動産売却でかかる住民税の計算方法を確認していきましょう。

不動産売却で住民税がかかるケース

不動産売却をして利益が発生すると、その利益に対して住民税が発生します。具体的には不動産を売却した金額が、不動産の取得費と譲渡費用を差し引いても残る場合です。

不動産の取得費とは、売却した土地や建物の購入費用、購入した際にかかる仲介手数料、登録免許税や不動産取得税、土地の改良費や設備費などの合計額を指します。

また、譲渡費用とは不動産売却時にかかった仲介手数料や印紙税など、売主が負担した費用を指します。これらを差し引いても利益が残る場合は、住民税がかかるというわけです。

利益が残る場合でも後に説明する控除額を差し引いても利益が残らなければ、住民税はかかりません。

不動産売却でかかる住民税の計算方法

不動産売却で得た利益は、譲渡所得と呼ばれています。不動産売却でかかる住民税は、譲渡所得に税率をかけた計算式で算出できます。

また、売却した不動産を保有していた期間が5年以下か5年超えかによって税率が異なるので注意しましょう。

<不動産売却でかかる住民税の計算方法>

譲渡所得(不動産売却による利益)=売却価格ー(取得費+譲渡費用)ー特別控除

なお、建物の取得費は、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算することになります。

売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いて残った譲渡所得を用いて、住民税を計算します。

住民税額 = 譲渡所得 × 税率

・売却した不動産の保有期間が5年以下の場合(短期譲渡所得)

住民税額=譲渡所得の額×9%

・売却した不動産の保有期間が5年超の場合(長期譲渡所得)

住民税額=譲渡所得の額×5%

上記からわかるように、売却した不動産の保有期間が長い方が利益に対する住民税が安くなります。

不動産売却で発生した住民税を支払う方法

不動産売却で発生した住民税は翌年に納めます。住民税の支払い方法には「普通徴収」と「特別徴収」の2種類あり、納めるタイミングが異なるため確認しておくことが大切です。

ここでは、不動産売却で発生した住民税を支払う方法と納税のタイミングについて解説します。

支払いは売却した翌年

住民税の支払いは不動産を売却した翌年に納めます。

例えば2024年の3月に不動産売却して利益が出た場合、翌年2025年の2月16日~3月15日までの間に確定申告を行い、2025年の6月以降の住民税として納税します。

利益が出なかった場合は、ほとんどのケースで申告不要です。ただし、税金控除などを受ける場合は確定申告が必要になります。

住民税の納め方は2つ

住民税の納め方には、以下の2つの方法があります。

・普通徴収
・特別徴収

それぞれどのような支払い方法なのか、納税のタイミングも含めて確認していきましょう。

普通徴収で支払う
普通徴収とは、「6月、8月、10月、翌年の1月」のそれぞれ末日まで、4期に分けて納税する方法です。6月頃に自治体から住民税通知書と納付書の2通が自宅に送られてきます。

役所の窓口で直接支払えるほか、クレジットカード払いや振り込み、コンビニ払いなど納付方法を選択できます。また、一括納付や2期分まとめてなど前倒しでの支払いも可能です。

住民税の納付を忘れてしまった場合、滞納となり督促が来たり差し押さえられたりするケースもあるため、必ず納付するようにしましょう。

特別徴収で支払う
特別徴収とは、給与や年金から住民税を差し引いて支払う方法です。会社員の場合、毎年6月から翌年5月までの給与から差し引かれます。

4期に分けて支払う普通徴収よりも支払う回数が多いため、一度に支払う金額は低くなります。しかし、支払う回数やタイミングが違うだけで支払う合計金額は一緒です。

特別徴収の場合、毎月給料から差し引かれるため、納付し忘れることがありません。

ただし、不動産売却をした翌年に住民税が一気に上がってしまうため、会社に知られたくない人は普通徴収を選択することをおすすめします。

不動産売却で発生した住民税を軽減できる控除・制度

不動産売却で発生した住民税は、以下の控除や制度によって軽減できる場合があります。

・条件を満たせば利用できる「3,000万円特別控除」
・10年所有した家に利用できる「軽減税率の特例」
・家の買い替えで利用できる「買い替えの特例」
・自治体を応援しながら軽減できる「ふるさと納税」

上記の控除や制度を利用するときには、自己申告する必要があります。

条件を満たせば利用できる「3,000万円特別控除」

不動産を売却した場合、以下の要件を満たしていれば譲渡所得から3,000万円を控除できます。

・マイホームを売却する、あるいは居住しなくなってから3年後にあたる12月31日までに売却すること

・建物を取り壊して土地だけ売る場合、取り壊してから1年以内に譲渡契約を結び、土地を他の用途に使用していないこと

・売却した年、前年、前々年に家の買い替えで利用できる「買い替えの特例」を受けていないこと

・売却相手が親族ではないこと

・併用不可な特例を受けていないこと

これらの要件を満たしていれば、3,000万円の特別控除を受けられます。

10年所有した家に利用できる「軽減税率の特例」

不動産売却した年の1月1日時点で、10年以上不動産を所有している場合は以下のように税率が軽減されます。

・譲渡所得金額が6,000万円まで:4%
・譲渡所得金額が6,000万円超え:5%

どちらの場合も3,000万円の特別控除と併用可能です。ただし、家を買い替えたときに利用できる「買い替えの特例」を受けていないことが条件になります。

家の買い替えで利用できる「買い替えの特例」

家を買い替えるときに利用できる特例で、不動産を売却した利益にかかる住民税の支払いを先延ばしできる制度です。

ただし、「3,000万円の特別控除」や「軽減税率の特例」との併用はできません。買い替えの特例を受けるには、以下の要件を満たしている必要があります。

・マイホームを売却する、あるいは居住しなくなってから3年後にあたる12月31日までに売却すること

・10年以上居住していることに加え、売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を満たしていること

・売却価格が1億円以下であること

・売却した年の前年から翌年までの期間内に新たにマイホームを購入すること

・買い替える家の床面積が50㎡以上、土地の面積が500㎡以下であること

上記の要件などが挙げられます。細かい要件が多いため、買い替えの特例を検討する場合は、一度税理士に確認してみると良いでしょう。

自治体を応援しながら軽減できる「ふるさと納税」

ふるさと納税をすると地方自治体へ寄付した金額から、自己負担の2,000円を引いた金額が住民税から控除されます。

自己負担は必要ですが、地方自治体からの返礼品をもらいながら住民税の支払額が減るのがメリットです。

ただし、住民税を控除できる額には限度があるため、控除限度額を超えて納税しないよう注意しましょう。

不動産売却で利益を得た年は、限度額が上がるため、いつもの年より多くふるさと納税できます。

不動産売却で住民税が発生したら適切に対応しよう

不動産売却で住民税がかかるのは、利益が出た場合です。住民税額は「譲渡所得(不動産売却による利益)×税率」で計算できます。

不動産の保有期間が5年以下の場合は税率9%、5年超えの場合は5%で税率が変わるので注意しましょう。

住民税の支払いは、不動産売却をした翌年です。支払い方法は4期に分けて納める「普通徴収」と毎月給与から引かれる「特別徴収」の2つの方法があります。

住民税を軽減できる控除や制度もあるため、要件を満たしているか確認しておくことも大切です。不動産売却で住民税が発生したら、適切に対応できるよう準備しておきましょう。

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監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一 弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。