- 2025.03.16
不動産の契約解除はできる?方法やタイミング、注意点もわかりやすく解説

一度不動産の売買契約を結んだ場合でも、契約の解除はできます。ただし、条件や手続きが複雑な場合もあるため、正しく理解しておくことが大切です。
万が一不動産契約を解除する必要がある場合に備えて、契約解除ができるケースや手続きの流れ、違約金や注意点について解説します。
目次
不動産の契約解除はできる?

不動産の売買契約を締結した後でも、契約の解除は可能です。売主・買主のどちらでも申し出ができます。
ただし、違約金の発生などペナルティが課せられる場合もあるため、慎重な対応が必要です。
不動産の契約解除ができる6つのケース

手付金による解除は、不動産契約解除の一般的な方法です。また、契約違反や契約不適合責任があった場合、消費者契約法に違反する場合も解除できます。そのほか、ローン特約・買替え特約の条件に合致するケースや話し合いで合意した場合も契約解除が可能です。
1.手付金による解除
不動産の契約解除における一般的な方法が手付金による解除です。買主は支払った手付金を放棄し、売主は手付金の倍額を返還することで解除できます。
ただし、相手が契約内容の履行に着手している場合、手付金による解除はできません。例えば、売主が所有権移転手続きを進めている場合や、買主が残代金を支払っている場合が、履行の着手に該当します。
契約解除のタイミングや条件を慎重に確認したうえでの手続きが必要です。
2.契約違反による解除
不動産の契約解除は、契約違反がある場合に相手に催告を行い、相当な期間を定めて契約に従った履行を催告したうえで行えます。例えば、買主が代金を支払ったにも関わらず、売主が所有権移転や引き渡しを行わない場合、買主は契約解除を申し出ることが可能です。
あるいは、売主が契約履行の準備を終えたにも関わらず、買主が代金を支払わない場合、売主は契約解除を申し出られます。
解除の申し出は必ず違反していない側から行われ、必要な手順を踏む必要があります。なお、契約違反があるか否か争いとなるケースもあり、裁判所の判断が必要になる場合もあります。契約違反における解除の場合、契約に違反した当事者は、売買契約で定められた違約金の支払義務が課せられるのが一般的です。
3.消費者契約法による契約の取り消し
事業者が事実と異なる説明をして消費者の意思決定を妨害した場合、消費者契約法に基づき、契約を解除できます。
ただし、適用されるのは売主または買主が不動産会社である場合のみです。
消費者契約法は、消費者が誤認や困惑により不利益を被らないように保護することを目的とした法律です。不動産会社が「将来的に価値が上がる」など不確かな情報を提供した場合などが、契約を解除できるケースに該当します。
法律に則った解除方法のため、必要に応じて専門家の助言を求めることも大切です。
4.契約不適合責任による解除
契約した物件に引渡時点に瑕疵があったことによって、住宅の建築や購入など契約の目的を達せられない場合、買主は契約不適合責任に基づいて契約を解除できます。
契約不適合責任とは、不動産の種類や品質などが契約内容に適合しない場合に、売主が買主に対して負う責任のこと。売主の不履行が責めに帰すことができない事由によることを立証した場合は免責されますが、このような免責事由が認められることは稀であると思われます。
修繕(追完請求)や代替措置(代金減額請求)を行っても契約内容を満たさない場合は、買主に契約解除の権利が生じます。買主は契約内容を十分に確認し、問題が生じた場合は迅速に対応することが重要です。
5.ローン特約・買替え特約の条件に基づく解除
ローン特約や買替え特約が盛り込まれた不動産売買契約では、以下のケースに当てはまる場合に契約の解除が可能です。
ローン特約:
購入予定の住宅ローンの審査が通らなかった場合、売買契約の締結後であってもペナルティなしで解除が可能。原則、手付金も返還される。
買替え特約:
一定期日までに現在の家を売却できない場合、新居購入契約の解除が可能。手数料や違約金は発生しない。
いずれも、買主が予期しない資金調達の失敗により、負担を強いられることを避けるために設けられています。
6.話し合いによる合意解除
売主と買主の話し合いにより合意すれば、契約の解除が可能です。契約書に解除の条項が記載されていなくても、当事者同士の話し合いで条件を決めれば問題ありません。
話し合いでは、手付金の返還条件や違約金の有無を明確にすることが大切です。また、合意した内容は書面に残しておくことで、トラブルを回避できます。
不動産の契約解除ができないケース

手付金放棄や倍返しによる契約解除は、売主や買主が契約の履行に着手する前に行わなければなりません。
例えば、前述したように売主が所有権移転登記を申請した場合や、買主が残代金を支払った場合などが契約の履行に該当します。一度履行に着手すると、手付金による解除が不可能です。
履行に該当するかどうかは状況にもよるため、不動産会社や弁護士などに確認するとよいでしょう。
不動産契約解除の流れ

不動産の契約解除の流れは、売主か買主の立場によって異なります。
- ・売主が解除する場合:手付金の倍額を買主に支払う
- ・買主が解除する場合:手付金を放棄する
仮に、売主が契約解除を申し出る場合の流れは以下のとおりです。
- (1)電話で契約解除の旨を伝える
- (2)書類で契約解除の旨を通知する
- (3)手付金の倍額を買主に支払う
契約解除は必ず書面で行い、内容証明郵便で相手に通知するのが望ましいでしょう。また、不動産の契約解除は法的拘束力が強く、解除の意思表示が相手に伝わった時点で撤回は不可能です。不動産会社や弁護士と相談し、慎重に判断しましょう。
不動産の契約解除をした場合は違約金がかかる?

不動産の契約を解除する際、状況によっては違約金が発生する可能性があります。通常、相手側が履行に着手していない場合は、手付金の放棄や倍返しによって契約の解除が可能です。
ただし、すでに履行に着手している場合は契約違反とみなされ、違約金がかかります。違約金の相場は契約金額の10〜20%が一般的です。不動産会社の場合は、違約金の上限が20%までと定められています。
なお、事故や予期せぬ事情によっては、違約金が免除される場合もあるため、不動産会社を通じて交渉を依頼するとよいでしょう。
不動産契約解除をする際の注意点

不動産の契約を解除する際は、必ず内容を書面に残しましょう。解除によって受け取った違約金や手付金は確定申告が必要です。仲介手数料を支払わなければならないケースがあることも覚えておきましょう。
1.契約解除の内容は書面に残す
不動産の契約解除は、書面で通知することが大切です。口頭での連絡では伝達ミスが起きやすく、トラブルにつながりやすいでしょう。たとえ双方が合意して成立した場合でも、書面に残っていないと返金や税務処理において問題が生じることもあります。
内容証明郵便を使用すれば、相手に届いた証明が残ります。トラブル防止のため、契約解除の事実は書面で明確にしておきましょう。
2.受け取った違約金や手付金は確定申告をする
不動産契約の解除で得た違約金や手付金は課税の対象です。一時所得とみなされるため、所得税と住民税を納める必要があります。
違約金や手付金を受け取った翌年の2月16日から3月15日までの間に、確定申告を行いましょう。なお、控除が適用される場合もあるため、事前に税務署や不動産会社に確認しておくと安心です。
3.仲介手数料を支払わなければならない場合がある
自己都合で不動産の契約解除を申し出る場合、仲介を依頼していた不動産会社に対し、仲介手数料を支払わなければならない場合があります。一度契約を交わしているため、不動産会社には報酬を請求する権利が認められているためです。
実際に請求されるかどうかは不動産会社によるため、事前に契約内容を確認し、必要に応じて相談しておくとよいでしょう。
不動産の契約解除は正しい知識で適切に行おう

不動産の契約締結後であっても、条件を満たすことで契約の解除は可能です。場合によっては違約金などペナルティが発生する可能性もあるため、不動産会社に相談しながら適切に進めましょう。
不動産の契約解除にお困りの方は、住栄都市サービスまでお気軽にご相談ください。
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1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。
