住栄ジャーナル

JUEI JOURNAL

  • 2024.05.31

マンションの権利書とは何?紛失したときの対処法と注意点を紹介

マンションの権利書とは、不動産の権利者であることを証明する書類を指します。正式名称は「登記済権利証」で、現在は「登記識別情報」に変更されました。

権利書はマンションを売買する際に必要ですが、紛失した場合でもいくつか対処法があります。ここでは、紛失した場合の対処法や売却時の対応、注意点について解説します。

マンションの権利書とは何?

権利書とは、正しくは登録済権利証といいます。現在は登記識別情報という名称に変更し、発行手続きや通知書面も変わりました。以下で詳しく説明します。

正式名称は「登記済権利証」

登記済権利証とは、不動産の権利者である登録名義人に交付される重要書類です。不動産を購入する際は、法務局での登記申請が必要ですが、登記が完了すると交付されるのがこの書類です。

登記済権利証は、登記名義人が本人であることを証明する際にも使われます。そのため、マンションの売却など、不動産売買で名義人変更手続をする際も必要な書類なのです。

現在は「登記識別情報」に変更されてきている

現在は登記済権利証ではなく、登記識別情報が発行されるようになりました。

登記済権利証との大きな違いは、オンライン申請により交付されるようになったことです。登記済権利証は、登記申請の際に本人が法務局に出向く必要がありましたが、登記識別情報に切り替わり、オンライン庁の管轄となったことでオンラインでも申請できるようになりました。

申請後、登記識別情報通知書が権利者に届きますが、書面に12桁の英数字が記載されていることも変更点のひとつです。この英数字は、権利者のみが知りうる情報として、貼り直しできないシールで隠されています。

マンションの権利書は売却時に必要

マンションを売却し、不動産の名義人を変更する場合は、所有権移転登記が必要です。登記の申請の際は、申請者が登記名義人であることを証明する必要があり、その確認に使うのが権利書だからです。

尚、マンション売却時に必要な書類は、権利書以外にもいくつかあります。以下に列記した項目を確認し、事前に揃えておくと良いでしょう。

書類名 説明
身分証明書 本人確認に必要。
通帳、キャッシュカード 売却代金を振り込んでもらう口座情報を伝えるために必要。
売買契約書 マンション購入時に取り交わした契約書。不動産会社と媒介契約をする際に必要。
重要事項説明書 その物件に関する物件内容や取引条件などが記載されている書類。不動産会社と媒介契約をする際に必要。
購入時の間取り図または仕様書 マンションのパンフレットやリーフレットなど、購入当時の間取りや設備などが記載された書類。売却活動の際に使用するためあると良い。
固定資産税納税通知書、固定資産税評価証明書 最新の固定資産税や不動産納付額などが記載された書類。所有権移転登記時に必要。
管理に係る重要事項調査報告書 管理費や修繕積立金、駐車場の区画数・使用料などが記載された書類。

 

マンションの権利書を紛失した場合の対処法3つ

権利書は、紛失しても再発行ができません。盗難の可能性がある場合は、まず不正使用を防ぐための対処が必要です。以下で詳しく説明します。

1.法務局へ相談

権利書を紛失したことを法務局に相談しましょう。法務局では、登記に関する事務を行なっています。対処方法や紛失に関する手続きについて具体的に教えてくれるでしょう。

2.不正登記防止の申出

次に、登記識別情報の悪用を防ぐために、不正登記防止申出をしましょう。

不正登記防止申出とは、紛失した権利書を使用し、本人以外が不正登記することを防ぐための制度です。申出をすると、申出にかかわる登記申請があったとき、その旨が申請者に通知されます。更に、登記申請者について疑いがある場合は、本人確認調査を行なってくれます。

不正登記防止申出は、原則マンションの所有者もしくは委任者のみが可能です。3ヶ月ごとに法務局に出頭し、手続きを行う必要があります。

3.登記識別情報の失効の申出

登記識別情報を紛失した場合は、登記識別情報の失効の申出をしましょう。所有者以外に情報を見られた場合、悪用される可能性があるため、登記識別情報の効力を失効させる必要があるためです。

申出は法務局で行います。登記名義人や登記名義人からマンションを購入した買主、もしくはその代理人などが申出できます。

権利書を紛失したマンションを売却する方法3つ

権利書を紛失した場合、マンションを売却し登記申請を行うには3つ方法があります。「資格者代理人による本人確認情報制度」「事前通知制度」「公証人による本人確認制度」について説明します。

1.資格者代理人による本人確認情報制度

司法書士や弁護士に依頼して本人確認情報を作成してもらう方法です。確実性が高いことから、最も多く利用されています。作成してもらった本人確認情報を権利書の代わりに提出すれば、法務局での手続き自体は申請日のうちに完了します。

ただし、本人確認証明情報の作成には、5〜10万円程度の手数料が必要です。確実ではあるものの最も費用のかかる方法です。

2.事前通知制度

事前通知制度とは、権利書がないまま行なった登記申請について、通知による本人確認を行うことをいいます。

登記申請する際、権利書がない正当な理由を申し添えて届出を行うと、法務局から本人限定受取郵便で事前通知書が郵送されます。受け取った事前通知書に押印し、2週間以内に法務局に提出すれば登記完了となります。

費用はほぼかかりませんが、申請から完了まで時間がかかるのがデメリットです。また、書類に不備があったり期間内に申出を行わなかったりすると、申請が却下されてしまいます。確実性に欠けるため、基本的に不動産売買での事前通知制度の利用はおすすめしません。

3.公証人による本人確認制度

公証人役場に行き、公証人に本人確認してもらう方法もあります。最寄りの公証役場で依頼すれば、数千円で書類を作成してくれます。

ただし、公証人による本人確認は、司法書士や弁護士に依頼した場合と比べて、しっかりとした本人確認が行われるわけではありません。そのため登記申請が無効になるケースがあるため、確実性の高い方法とは言えないのがデメリットです。

マンションの権利書を紛失した場合の注意点

権利書を紛失したマンションを売却する際、「対処に時間がかかること」「権利書が必要なのは売買と贈与のみ」の2つに注意が必要です。以下で詳しく説明します。

対処法の制度を利用する場合は十分な期間が必要

対処法の章で紹介した「資格者代理人による本人確認情報制度」「事前通知制度」「公証人による本人確認制度」は、対応に時間がかかるため注意が必要です。

資格者代理人による本人確認は、書類作成に時間がかかります。また、事前通知制度や公証人による本人確認を利用する場合も、なんらかの理由で申請が無効になる可能性もあります。

そのため、決済日直前に紛失に気付いても対応が間に合いません。売却前に権利書があるか確認し、紛失に気づいたら早急に対処をすることが大事です。

権利書が必要になるのは売買と贈与の場合

権利書が必要なのは売買と贈与の場合で、相続の場合は必要ありません。

売買と贈与の場合に権利書が必要な理由は、所有者本人に名義変更の意思があるか確認する必要があるためです。相続では、所有者本人が亡くなったことにより名義変更を行うため、故人の意思確認ができません。そのため、権利書は必要ないのです。

マンション権利書は大切に保管しておこう

マンションの権利書とは、所有者本人のみが所有できる重要な書類です。権利書は、マンション売却時の登記申請で、申請者が所有者本人であること確認するために必要になります。

権利書を紛失した場合、資格者代理人による本人確認を依頼するなど対応方法はありますが、いずれも対応に時間がかかります。決済に間に合うよう、売却前に権利書があるか確認しておくようにしましょう。

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監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一 弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。